とらかぷっ!あふたーすとぉりぃ(当然非公式)
〜七夕騒動:当日編〜
「コケーーー!コケコケッコッケーーーーーッ!」
朝一番。
庭ではブライアントが走り回っている。
夏の朝は陽の昇りが早くて、まだ7時にもなってないのに
すっかり空は青い。
うん、今日もいい天気になりそうだ。
ブライアントもそれが嬉しいのかな?
さっきから、まるではしゃいでるみたいに走り回っている。
「コケコケコケーーッ!!」
そんなブライアントの傍まで行き、僕は彼を抱え上げる。
「とりあえず、ケージに戻ってくれるかな?」
「コケッ?」
「うん、学校行く前に、庭掃除するよ。
せっかく早起きしたんだもの。」
「コケコケッ!」
今日は何故か6時前に目が醒めた。
早起きは気持ち良いし、いい事だと思うけど
桜姫はぐっすり寝てるし、その時は姫咲さんだって
まだ起きてなかった。
起こすのもなんだからってこうして朝から
庭掃除でもって思ったわけで。
「本当は昨日のお昼やるつもりだったんだけど
何だか色々あったからなぁ。」
ブライアントを降ろしてやって、そんな事をつぶやきながら
ホウキを探しに行く僕。
普段は梯子と一緒にしまってるから…。
「あれ?姫咲さん?」
そこには、今まさにホウキを回収した姫咲さんの姿が。
「優太君?今日は随分早起きなのね。」
「何だか、目が醒めちゃって。」
昨日、お風呂で見せたあの表情…。
星空を見上げて七夕の事を語った時の事が少し気になったけど
とりあえず、今はその話は避けようと思った。
「姫咲さん、庭掃除なら僕がやるよ?」
「いいのいいの。私の朝の日課なんだから。」
…朝の日課?
知らなかった。
日曜日は庭の手入れとか僕もするようにはしてたけど
それでもこの庭が汚くなったの見たこと無いと思ってた。
この人は、朝から晩まで大変なんだな。
「せっかくの早起きだからさ。
たまには、姫咲さんが朝ゆっくりしてもいいと思うよ。」
僕に出来るのは、こんな時こそ少しでも
彼女を手伝うことだと思った。
「いいの?優太君。」
「うん。」
「そう?
じゃあ、私は今日の朝ご飯は気合入れて作ろうかしら!」
言うが早いか家の中へと消えてゆく。
ええっと…
どちらかって言うと、ゆっくりして欲しかったんだけど。
……姫咲さんって、家事中毒?
時計が7時半に近くなる頃、朝食が出来上がる。
それに合わせて桜姫は起きてくるし、僕も
いつもはそれぐらいの時間に起きている。
時間は普段通りの朝食。ただ
「母様!何この豪華な朝ご飯!?」
と、桜姫が驚くほどの気合の入れっぷりだった。
「今日はね、優太君のおかげでいつもより時間をかけて
準備することができたのよ。」
「そうなんだ。
えらいぞっ!ゆーた!!」
「う…、うん、ありがと…。」
だから、僕は少しでもゆっくりしてほしかったのに…。
まあ、仕方ないのかな。
何だか姫咲さんって、物凄く楽しんで家事やってるように見えるし。
「それじゃ、いただきまーす!」
3人できちんと挨拶。
そして、桜姫が物凄い勢いで食べていく。
「うんうん、いい食べっぷりね〜。お母さん嬉しい♪」
「姫咲さん…そのノリはちょっと…。」
何だか姫咲さんって、子供っぽいところあるよね。
「ゆーたっ!箸が進んでないわよ。
母様が作ってくれてるんだからちゃんと食べる!」
「わ、わかってるよ〜。」
すっかり、朝の恒例となったこの賑やかな食卓。
ただ、僕の頭からは昨日の姫咲さんの顔が消えない。
なんであんなに寂しそうな目で天を仰いでいたんだろう…?
ひょいぱくっ!
「あー!桜姫!!
今僕の玉子焼き食べたなっ!?」
「食事もせずにぼーっとしてる優太が悪いんでしょ!」
「女の子なのにはしたないよっ!」
「なーーーーんですってぇ!?」
2人の視線同士で火花が散った。
その時。
「優太君…?」
姫咲さん…だけど、妙に威圧感のある声。
「桜姫…?」
そのまま、桜姫の名も呼ぶ。
「ひっ!?」
僕達2人の視線は、ゆっくりと、同じ方向へ向けられた。
その先にいるのは…姫咲さん。一見笑顔で。
……で、でも、目元が、目が笑ってないっ!!
「あ、あの…姫咲さん?」
「桜姫。優太君。」
「は、はいっ!!」
「……2人共、食事中にケンカしないこと…。いいわね…。」
「は、は、はいぃっ!」
恐かった。かなり。
なんていうか…オーラ?
完全に呑まれた僕と桜姫は慌てて朝食を食べ終わって
そのまま逃げるように部屋に帰った。
「こ、恐かった…。
姫咲さんが怒ったの、初めて見る気が…。」
「前も言ったじゃないの…。
母様は怒るとものすごく恐いんだから…。」
「う、うん。そうみたいだね。」
結局僕達はそのまま学校の支度をして
登校へと赴く事にした。
いつもより幾分早いけど、たまにはいいだろう、と。
「それじゃ、いってきます!」
出る時に一声。
「いってらっしゃ〜い。」
と、台所から聞こえた姫咲さんの声は
いつも通りだった。
その事に僕達は安心するのだった。