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1−5 基本的な回路2

ここでは、半導体を使用した基本的な回路を説明する。

a.ダイオード回路


<図−1.5.1>ダイオードの構造

ダイオードは、上図のようにP型半導体とN型半導体を組み合わせたPN接合を持つ半導体素子である。
P型半導体には結晶内に正孔と呼ばれる電子の欠落した穴が存在している半導体であり、N型半導体には結晶内に電子が余っている半導体である。
ダイオードに電圧を印加すると半導体内の電子と正孔が移動する。アノード側に+電圧が印加(順方向に電圧印加)されると、電子と正孔がPN接合の方向に移動するため、電子がPN接合を飛び越えて移動することができる。
逆にカソード側に+電圧を印加(逆方向に電圧印加)すると、電子と正孔がPN接合から離れるため電子がPN接合を飛び越えることができなくなる。
よって、ダイオードは一定の方向にしか電流が流れない。
この性質を利用して、交流電流を直流にする(整流する)ことができる。


※電流と電子の流れについて

電流は電位の高いほう(+極のほう)から電位の低いほう(−極)へ流れる。
一方、電子は負の電荷を持っているため、電位の低いほう(−極)から電位の高いほう(+極)に流れる。
この2つを混同しないように気をつける必要がある。



<図−1.5.2>ダイオードの整流作用

PN接合を電子が乗り越えるには、ある一定のエネルギーが必要となる。
このときに必要なエネルギーは、Si(シリコン)半導体であれば約0.6Vであり、この電圧以上印加しないと順方向でも電流が流れない。
この電圧を順方向電圧降下といい、この電圧とダイオードに流れる電流をかけた分だけのエネルギーがダイオードで消費される。

b.トランジスタ回路


<図−1.5.3>トランジスタの構造

トランジスタは、上図のようにPN接合を2つもつ半導体素子である。
トランジスタの基本的な回路として、下図のような電流増幅回路である。

<図−1.5.4>トランジスタの基本的な回路

トランジスタは、ベースに流れる電流によりコレクタに流れる電流を制御できる。
ベースに流れる電流の数十〜数百倍の電流がコレクタに流れる電流となる(電流増幅)。
また、通常動作している範囲ではベース電流とコレクタ電流の比はほぼ一定である。
この電流比を電流増幅率(hFE)という。

c=Ib・hFE [A]

となる。
トランジスタはPN接合があるため、ダイオードと同じく順方向電圧降下が存在する。
よって、B−E間の電圧が順方向電圧降下の電圧以下であればベース電流は流れない。
そのため、ベース電圧がPN接合の順方向電圧降下以下ではトランジスタはOFFの状態(トランジスタには電流が流れない状態)となる。
また、ベース電圧は、トランジスタがON状態であると順方向電圧降下の電圧となる。

c.OPアンプ回路


OPアンプ[Operational Amplifier]は、数個の外付け部品により比較的簡単にアナログ回路を組むことができるICである。
ここではOPアンプの基本的な回路を説明する。

<図−1.5.5>OPアンプ

OPアンプは、上図のように表す。
OPアンプは反転入力(−入力)と非反転入力(+入力)と出力がある。
OPアンプには、通常+/−電源が必要になる。
OPアンプの基本動作は、非反転入力の電圧Vin-と反転入力の電圧Vin+の差を増幅してVOUTに出力する。

OUT=(Vin+−Vin-)・A0 [V]   A0:OPアンプのオープンループゲイン

OPアンプのゲイン(オープンループゲイン:A0)は、10000以上ある。
計算をする上では、入力インピーダンスが∞、出力インピーダンスが0、A0が∞の理想アンプで計算すると簡単である。
ただし、外付け部品によっては、入出力インピーダンスやA0が無視できない場合があるので、注意が必要である。


i.非反転増幅回路


<図−1.5.6>非反転増幅回路

上図は非反転増幅回路である。(電源は省略してある)
この回路は入力電圧を外付けの抵抗2個で決めたゲインで増幅した電圧を出力する。
反転入力に出力の一部をフィードバック(帰還)することにより、ゲインをコントロールすることができる。
出力電圧VOUTは、

OUT=(Vin+−Vin-)・A0

    =(Vin−R1/(R1+R2)・VOUT)・A0

これより、

OUT=1/(1/A0+R1/(R1+R2))・Vin

ここで、A0=∞とすると、1/A0=0より、

OUT=(R1+R2)/R1・Vin

    =(1+R2/R1)・Vin [V]

となる。
非反転回路では上式を見て分かるように、ゲインを0dB(入力=出力)以下にすることができない。


ii.反転増幅回路


<図−1.5.7>反転増幅回路

上図は反転増幅回路である。(電源は省略してある)
出力電圧は入力電圧と+/−が反転する。
この回路の場合は、Vin+=Vin-となるように動作する。
よって、非反転入力端子は、常に0Vになる。このときの非反転入力端子を仮想グランドと呼ぶ。
また、非反転入力端子の入力インピーダンスは∞とすると、R1とR2に流れる電流は等しい。
これより、

in/R1=−VOUT/R2

よって、

OUT=−R2/R1・Vin [V]

となる。
反転回路は、ゲインを0dB以下にすることは可能であるが、出力は必ず入力と極性が反転してしまう。
また、入力抵抗値Rにより、入力インピーダンスが変化してしまう欠点がある。



反転増幅回路・非反転増幅回路にはそれぞれ特徴があるので、注意して使用する必要がある。




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