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1−3 回路の要素

回路を構成するための主な素子を説明する。
回路図を書くときには、それぞれの要素に応じた回路記号を使用する。

a.抵抗[Resister]

[概要]
電流が流れるのを妨げる素子。
電流 I[A]=素子にかかる電圧 E[V]/抵抗 R[Ω]
電流を流すことにより、熱として電力を消費する。
消費する電力 P[W]=(素子にかかる電圧 E[V])2/抵抗 R[Ω]

[直流での働き][交流での働き]
どちらも同じ。

[素子の構造]
金属、炭素、金属酸化物など電流の流しにくい導体を線にして巻いたものや筒状にしたもの。電流の流れる距離か長くなる、導体の断面積が小さくなると、抵抗は大きくなる。

[単位]
Ω(オーム)

[種類]
・固定抵抗
・半固定抵抗
・可変抵抗

[回路記号]

<図−1.3.1>回路記号

b.コイル[Coil]

[概要]
電流の変化に対して、変化させないように起電力を発生するような素子。

[直流での働き]
電流の変化のない直流の定常状態では、電流はすりぬける。

[交流での働き]
常に電流の変化がある交流では、周波数が高くなるにつれ電流を流さないような働きをする。
インピーダンス Z[Ω]=ω・L[H]  (ω=2πf)

[素子の構造]
導線を巻いたものである。巻き数が多くなるとインダクタンスは大きくなる。

[単位]
H(ヘンリー)

[種類]
・低周波コイル(鉄芯あり)
・高周波コイル(鉄芯なし)

[回路記号]

<図−1.3.2>回路記号

c.コンデンサ[Capacitor]

[概要]
電荷を蓄えることができる素子。素子にかかる電圧に応じて電荷が蓄えられる。
蓄えられる電荷 S[C]=素子にかかる電圧 E[V]x静電容量 C[F]
電圧が高くなる方向に変化すると、電荷を蓄えるために電流が流れる。
電圧が低くなる方向に変化すると、電荷を放出するために電流が逆方向に流れる。

[直流での働き]
電流の変化のない直流の定常状態では、電流は流れない。

[交流での働き]
常に電流の変化がある交流では、周波数が高くなるにつれ電流を流すような働きをする。
インピーダンス[Ω]=1/ωC  (ω=2πf)

[素子の構造]
絶縁体を2枚の電極ではさんだもの。絶縁体の誘電率が高くなる、電極の距離が短くなる、電極の面積が大きくなると静電容量は大きくなる。

[単位]
F(ファラド)

[種類]
・電解コンデンサ
・セラミックコンデンサ
・フィルムコンデンサ
・トリマコンデンサ(半固定コンデンサ)
・バリコン(可変コンデンサ)
[回路記号]

<図−1.3.3>回路記号

d.ダイオード[Diode]

[概要]
電流を一定の方向(アノードからカソードへ)にのみ電流が流れる素子。

[素子の構造]
P型半導体とN型半導体を接合させたもの。半導体の種類や構造などにより、色々な機能のものがある。

[種類]
・整流用ダイオード
・ショットキダイオード
・発光ダイオード(LED[Light Emitting Diode])
・定電圧ダイオード(Zenner Diode)
・可変容量ダイオード
・PINタイオード

[回路記号]

<図−1.3.4>回路記号

e.トランジスタ[Bipolar Transister]

[概要]
信号の振幅や電流を増幅する素子。
コレクタに流れる電流 Ic[A]=ベースに流れる電流 Ib[A]x直流電流増幅率 hFE

[素子の構造]
P型半導体−N型半導体−P型半導体という感じで2つのPN接合が存在する半導体。
半導体両極にコレクタ・エミッタ電極があり、間にはさまれた半導体にベース電極がある。

[種類]
・PNP型トランジスタ
・NPN型トランジスタ

[回路記号]

<図−1.3.5>回路記号

f.FET[Field Effect Transister]

[概要]
電界効果型トランジスタ。信号の振幅や電流を増幅する素子。
トランジスタが電流制御により動作するのに対し、FETは電圧制御で動作する。

[素子の構造]
P型またはN型半導体の真中に空乏層を設けた半導体。両端にドレイン・ソース電極があり、空乏層にゲート電極がある。

[種類]
・PチャンネルFET
・NチャンネルFET

[回路記号]

<図−1.3.6>回路記号

g.IC[Integrated Circuit]

[概要]
ある機能をもった回路を1つに集積したもの。
トランジスタ、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの素子を数mm角の基板上に集積している。

[素子の構造]
素子を集積した基板(ICチップ)よりリード線を引き出して、基板まわりはエポキシ樹脂などで固めた構造。
直接チップをプリント基板上に載せる場合もある。

[種類]
・薄膜IC(半導体基板内に素子を作りこんでいるもの)
・厚膜IC(セラミック基板上に小型化した素子を実装したもの)

[回路記号]

<図−1.3.7>回路記号

h.バリスタ[Varistor]

[概要]
通常電流を流さないが、一定の電圧以上の電圧がかかると急激に電流が流れ始める素子。

[素子の構造]
酸化物半導体の両端に電極を設けたもの。

[回路記号]

<図−1.3.8>回路記号

i.トランス[Transformer]


[概要]
複数のコイルを磁気結合させた素子。
交流の電圧変換や、インピーダンス変換などに用いる。

[素子の構造]
鉄心などの周りに複数のコイルを巻きつけた構造。

[種類]
・電源用トランス
・高周波用トランス


[回路記号]

<図−1.3.9>回路記号

j.電源[Power Supply]

[概要]
回路を動作させるために、電流を供給するもの。
直流(DC)と交流(AC)の電源がある。
直流電源には、定電圧源や定電流源がある。

[素子の構造]
化学変化により電圧を発生させるバッテリ、動力を電力に変換する発電機などがある。

[種類]
・定電圧源
・定電流源
・交流電源

[回路記号]

<図−1.3.10>回路記号

k.電球[Lamp]

[概要]
電流を流して、発光する素子。

[素子の構造]
不活性ガスの入ったガラス球の中にフィラメントを置いたもの。

[回路記号]

<図−1.3.11>回路記号

l.サーミスタ[Thermistor]

[概要]
温度により、抵抗値が大きく変わる素子。
温度が上がると抵抗が下がる。

[素子の構造]
酸化物半導体の両端に電極を繋げたもの。

[回路記号]

<図−1.3.12>回路記号

m.ポジスタ[Posister]

[概要]
サーミスタと同様に温度により抵抗値が大きく変わる素子。
温度が上がると抵抗が上がり電流を流れるのを阻止する。

[素子の構造]
温度により膨張/収縮する絶縁体(高分子ポリマ)と導電物質を混ぜ固めた物の両端に電極を付けたもの。

[回路記号]

<図−1.3.13>回路記号

n.スイッチ[Switch]

[概要]
回路のON/OFFをするための素子。

[素子の構造]
2つ以上の接点を機械的に開いたり閉じたりするようにしたもの。

[種類]
・トグルSW
・スライドSW
・プッシュSW
・ロータリーSW

[回路記号]

<図−1.3.14>回路記号

o.リレー[Relay]

[概要]
回路のON/OFFを電気的に行えるようにした素子。

[素子の構造]
電磁石によりメカ的に接点をON/OFFするもの、LEDとフォトMOSFETを組み合わせてON/OFFを行うものなどある。

[種類]
電磁式リレー、フォトMOSリレーなどある。


[回路記号]

<図−1.3.15>回路記号

p.グランド[Ground]

[概要]
基準電位。通常は、バッテリの−極や筐体・接地(アース[Earth])に接続し、ここの電位を0Vとする。
+/−両電源の場合は中間電位をグランドとする。

[種類]
基板上のグランドや地面や筐体に落とすものにより記号で分類する。

[回路記号]

<図−1.3.16>回路記号




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